FPと証券会社・保険外交員の違い

「お金の専門家」という言葉を聞くと、FP、証券会社の担当者、保険外交員など、さまざまな顔ぶれが思い浮かぶのではないでしょうか。でもね、実はそれぞれ役割も立場もまったく違うんです。

今回は、混同しやすいこの3者の違いをざっくりと整理してみましょう。どこに相談すればいいか迷っている人や、これから金融の世界で働きたいと思っている人には特に役立つはずです。

FPとは?その役割と特徴

FP、つまりファイナンシャルプランナーは、一言でいえば「人生とお金の総合アドバイザー」です。家計管理から教育資金、老後の準備、税制、相続まで、生活にまつわるお金の問題を幅広く扱います。

FPの業務内容

FPが提供するのは、主に次のようなサービスになります。

  • ライフプラン全体の設計
  • 家計の見直しや貯蓄計画のアドバイス
  • 住宅ローンや教育資金の準備方法の提案
  • 税金、年金、相続に関する相談対応
  • 保険や資産運用の基本的な情報提供

ただし注意したいのは、FP資格だけでは具体的な金融商品を販売したり、その取引を仲介したりすることはできないという点です。

企業系FPと独立系FP

FPには大きく分けて2つのタイプがあります。証券会社や保険会社などに所属する「企業系FP」と、自ら事務所を構えて活動する「独立系FP」です。

タイプ 特徴 収入源
企業系FP 金融機関や保険会社などに勤務 給与+販売手数料
独立系FP 個人事務所を持ち独立 相談料、執筆料、講演料など

企業系FPは、自社の商品を販売することが主な使命になりますから、営業力が求められる場面も多いです。一方、独立系FPは相談者に寄り添った中立的なアドバイスができる反面、営業活動や集客は自力で行わなければなりません。

証券会社の営業担当者とは

証券会社の営業担当者は、株式や投資信託、債券といった有価証券の販売と取引仲介を行うプロフェッショナルです。

主な業務と特徴

証券会社に勤める営業担当者が日々やっていることといえば——

  • 株式、債券、投資信託などの提案と販売
  • 市場動向や銘柄情報の提供
  • 顧客の資産運用状況のフォロー
  • 自社が主幹事を務めるIPOや社債の販売

証券会社は、企業が資金調達をする際の重要な仲介役でもあります。そのため、営業担当者には自社グループが関わる商品の販売ノルマがかかることもあるんです。

FPとの違い

FPが「人生全体のお金の設計図」を描くのに対し、証券会社の営業担当者は「資産運用という一部分に特化した提案」を行います。ライフプラン全体を見渡すというよりは、資産を増やすための具体的な金融商品を選び、取引をサポートするのが仕事です。

また、証券会社の担当者には転勤制度が残っている場合も多く、せっかく信頼関係を築いても数年で担当が変わってしまう可能性があります。

保険外交員の仕事内容

保険外交員は、生命保険や損害保険を販売する専門職です。

業務の中心

保険外交員の主な活動は以下の通りです。

  1. 保険商品の提案と契約締結
  2. 既存顧客のアフターフォロー
  3. 保険金請求のサポート
  4. 保障内容の見直し提案

保険外交員は個人事業主として働くケースも多く、報酬は販売実績に大きく左右されます。たくさん契約を取れば高収入が見込めますが、売れなければ収入はほとんどないという厳しい世界でもあるんです。

FPや証券会社との違い

保険外交員は、保険という一つの商品ジャンルに特化しているのが大きな特徴です。FPのように家計全体を見渡したり、証券会社のように株式投資の提案をしたりすることは基本的にありません。

ただし最近では、FP資格を持ちながら保険会社に勤務する「企業系FP」として活動している人も増えています。こうした人たちは保険販売を主軸にしつつ、FPの知識を活かして顧客にトータルなアドバイスを提供しているケースもあるんです。

3者の違いを整理してみよう

ここまでの内容を、分かりやすく表にまとめてみました。

職種 主な役割 扱う商品・サービス 所属
FP ライフプラン全体の設計とアドバイス 相談・助言(商品販売は資格次第) 企業系/独立系
証券会社営業 資産運用商品の提案と販売 株式、投資信託、債券など 証券会社
保険外交員 保険商品の販売とフォロー 生命保険、損害保険 保険会社/代理店

それぞれに向いている人

どの職種が自分に合っているかは、性格や働き方の好みによって変わってきます。

  • FP(独立系):人の人生に寄り添い、中立的な立場でアドバイスしたい人。営業力と集客力が求められる。
  • 証券会社営業:投資や市場分析が好きで、数字を追うことにやりがいを感じる人。ノルマと向き合える人。
  • 保険外交員:人と深く関わり、保障という安心を提供したい人。完全歩合制でも頑張れる人。

相談先を選ぶときのポイント

自分が相談者の立場になったとき、誰に相談すべきかを見極めることも大切です。

目的に応じて使い分けよう

相談内容によって、最適な相談先は変わります。

  • 家計全体を見直したい→ 独立系FPがおすすめ
  • 投資信託や株式投資を始めたい→ 証券会社の担当者
  • 生命保険の見直しをしたい→ 保険外交員やFP

ただし、企業系FPや証券会社の担当者は、基本的に自社商品を勧める立場にあることを忘れないようにしましょう。中立的なアドバイスが欲しいなら、独立系FPや複数の相談先を比較検討するのが賢明です。

複数の相談先を持つ

一つの相談先に絞ってしまうと、偏った提案を受けるリスクがあります。異なるタイプの専門家に相談し、複数の意見を聞いてから判断するのが理想的です。

これからの金融サービスとFPの役割

近年では、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)という新しい形態も注目されています。IFAは金融商品仲介業者として、特定の証券会社に所属せず、複数の会社と業務委託契約を結んで活動します。

FPが「設計図を描く人」だとすれば、IFAは「設計図をもとに商品を選び、取引まで伴走する人」といったイメージでしょうか。転勤もノルマもない分、顧客と長期的な関係を築きやすいのが強みです。

こうした多様な選択肢が増えているからこそ、それぞれの役割や立場の違いを理解しておくことが、ますます重要になってきているんです。

自分に合った専門家を見つけよう

FP、証券会社の営業担当者、保険外交員——どれも「お金の専門家」ではありますが、それぞれ得意分野も立ち位置も異なります。

大切なのは、自分が何を求めているのかをはっきりさせること。そして、相談先がどんな立場でアドバイスしているのかを意識することです。

「とりあえず相談してみよう」も悪くないですが、その前に今回の内容を頭の片隅に置いておくだけでも、きっと選び方が変わってくるはずですよ。