家計状況を見える化して改善ポイントを見つける

ファイナンシャルプランナーとして仕事をする上で、クライアントの家計状況を正確に把握することは最初の重要なステップです。

多くの人は自分の家計を「なんとなく」しか理解していないもの。その曖昧な状態を、具体的な数字とデータで見える化し、改善すべきポイントを明確にする。これがFPの腕の見せどころなんですよね。

ヒアリングで家計の全体像をつかむ

家計の見える化は、丁寧なヒアリングから始まります。クライアントに「毎月いくら使っていますか?」と聞いても、正確に答えられる人はほとんどいません。

だからこそ、こちらから質問を重ねながら、収入と支出の実態を掘り下げていく必要があります。

給与明細、銀行口座の取引履歴、クレジットカードの利用明細、電子マネーやQR決済の履歴…クライアントが持っているあらゆる資料を確認させてもらいます。家計簿をつけていない人でも、こうした記録から実際のお金の流れを再現できるんです。

さらに、固定費と変動費を分けて整理すると、どこに改善の余地があるかが見えてきます。

支出を項目別に分類して傾向を見つける

収入と支出のデータが揃ったら、次は支出を項目ごとに分類する作業。食費、光熱費、通信費、保険料、娯楽費、交際費…細かく分けることで、クライアント自身も気づいていなかった支出の傾向が浮かび上がってくる。

たとえば「外食費が月6万円」とか「サブスクリプションサービスに月1万円以上使っている」とか、数字で示されると「そんなに使っていたのか」と驚くクライアントも多いんですよね。この驚きが、改善への第一歩になるわけです。

支出項目 月額(円) 年間(円) 収入に占める割合
住居費(住宅ローン) 120,000 1,440,000 24%
食費 80,000 960,000 16%
光熱費 25,000 300,000 5%
通信費 18,000 216,000 3.6%
保険料 35,000 420,000 7%
娯楽費・交際費 50,000 600,000 10%
教育費 40,000 480,000 8%
その他 32,000 384,000 6.4%
合計 400,000 4,800,000 80%

こうして表にまとめると、各項目が収入の何パーセントを占めているかが一目瞭然。一般的な家計のバランスと比較することで、どこが突出しているかを指摘できるようになります。

固定費と変動費を分けて優先順位をつける

支出の分析で重要なのは、固定費と変動費を区別すること。固定費は毎月決まった金額が出ていく項目で、住宅ローンや家賃、保険料、通信費、サブスクリプションサービスなどが該当します。

一方、変動費は月によって金額が変わる食費、光熱費、娯楽費など。

改善効果が高いのは、実は固定費のほう。一度見直せば継続的に削減効果が続くからです。たとえば保険を見直して月5000円削減できれば、年間6万円、10年で60万円の節約になる。こうした長期的な視点での提案ができるのが、FPの強みなんですよね。

改善ポイントを具体的に提示する

家計の見える化ができたら、次はいよいよ改善ポイントの提示です。ただし「ここを減らしましょう」と言うだけでは不十分。なぜその項目を見直すべきなのか、どれくらいの効果が期待できるのか、具体的な方法は何か…そこまで示すことで、クライアントは行動に移しやすくなります。

  • 保険の見直し:必要保障額を再計算し、過剰な保険や重複している保障を整理する
  • 住宅ローンの借り換え:金利差を確認し、借り換えによる総返済額の削減効果を試算する
  • 通信費の削減:大手キャリアから格安SIMへの乗り換えで月5000円程度の節約が可能
  • サブスク整理:使っていない動画配信サービスやアプリの月額課金を解約する
  • 電力会社の切り替え:電力自由化で選択肢が増えた中から、最適なプランを選ぶ
  • ふるさと納税の活用:実質2000円の負担で返礼品を受け取り、食費を削減する

こうした具体的な改善策を、優先順位をつけて提案していきます。クライアントのライフスタイルや価値観を尊重しながら、無理なく実行できる範囲で提案することが大切なんです。

数字で効果を示して行動を促す

改善提案をする際には、必ず数字で効果を示すようにします。「保険を見直すと月1万円浮きますよ」と言うだけでなく、「年間12万円、10年で120万円の削減になります。この金額を年利3%で運用すると、10年後には約140万円になります」といった具合に、長期的な視点での試算を見せる。

数字で見せることで、クライアントは改善の価値を実感しやすくなる。「たかが月1万円」と思っていたものが、長期で見ると大きな金額になることに気づいてもらえるんですよね。この気づきが、行動変容のきっかけになります。

定期的なモニタリングで改善を継続させる

家計の見える化と改善提案は、一度やって終わりではありません。提案した改善策が実際に実行されているか、効果が出ているか、定期的にフォローアップすることが重要です。3ヶ月後、半年後、1年後…といったタイミングで再度家計を確認し、計画通りに進んでいるかをチェックする。

もし計画通りに進んでいなければ、その原因を一緒に考えます。「やろうと思ったけどできなかった」という場合、何が障害になっているのかを掘り下げる。そして、より実行しやすい別の方法を提案するんです。

こうした継続的なサポートが、クライアントとの信頼関係を深め、長期的なパートナーシップにつながっていきます。